MFT(口腔筋機能療法)とは?トレーニング方法や費用について詳しく解説!
こんにちは。イオンモール柏向かいにございます、ウィズ歯科クリニック歯科医師小川です。
「口がいつもぽかーんと開いている」「喋るときに舌が見えている」「頬杖をついている」お子さんにこのような癖や行動はありませんか。ふだん見かける何気ない行動が、お子さんの歯並びや噛み合わせに大きく関わっているとしたら、改善させたいと思う親御さんは多いでしょう。
小児の歯科治療では、歯並び・噛み合わせに影響を与える習慣や癖を改善して、口周りの筋肉が正常に働くように促す「MFT」と呼ばれるトレーニングがあります。
今回は、MFTの概要やトレーニング方法・歯並びに影響を与える癖・悪い歯並びが与えるリスクを解説していきます。こどものお口周りの癖が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
MFT(口腔筋機能療法)とは?
MFTは、歯並びや噛み合わせに関係する口周りの筋肉が正常に働くように改善させる訓練法です。歯並びや噛み合わせは、遺伝の影響と生活習慣や癖によって決まります。
しかし、遺伝の要素より、日常生活でおこなわれる頬や舌・唇などの口周りの筋肉が異常な動きをしているほうが、歯並び・噛み合わせに悪影響を与えるといわれています。MFTをおこなって異常な筋肉の動きを改善できれば、歯が正常な位置に生えそろうことが期待できます。
MFTは、主に矯正治療中に並行しておこなうケースが多いです。矯正治療で、美しい歯並び・噛み合わせを手に入れても、口周りの筋肉に異常な動きがあると、歯並びがもとに戻る「後戻り」など、歯並びが悪化する原因になります。歯並び・噛み合わせの異常から口内を守るには、口周りの筋肉の癖を改善させることがポイントになるといえるでしょう。
歯並びに影響を与える癖とは?
歯並びは遺伝の影響も受けますが、日常生活の習慣や癖が大きく影響するといわれています。
歯並びに影響を与える癖は、以下の5つです。
・指しゃぶり
・舌壁
・口呼吸
・頬杖
・うつ伏せ寝・横向き寝
順に解説していきます。
指しゃぶり
指しゃぶりは、指で上の前歯を裏から押し出して、下の前歯を表側から押さえつける状態です。上あごの成長を促進させて、下あごの成長を抑制させてしまうリスクが高いでしょう。
指しゃぶりを続けていると「出っ歯」や上下の前歯が噛み合わない「開咬」など、不正な歯並びになりやすいといわれています。3歳前後までの指しゃぶりは、問題ないので無理にやめさせる必要はありません。5歳前後まで続く場合は、歯並びや噛み合わせに影響が出るのでやめさせるようにしましょう。
舌癖
舌は「スポット」と呼ばれる、上の前歯から喉の奥へ舌を移動させていくとあるくぼみに収まっているのが正常な状態です。舌癖のある方は、舌の位置が上下の前歯の間など低い位置にあり、歯を常に押しているような状態になってしまいます。また、飲み込む動作をするときも、舌で上下の前歯を押しながら飲み込みます。飲み込む動作は、食事だけだと思っている方が多いでしょう。
しかし、私たちは無意識に、1日600〜2,000回ほど飲み込む動作をおこなっています。前歯が常に裏側から押されている状態になるので、不正な歯並びになるリスクが高いでしょう。舌癖がある方は、開咬や出っ歯・受け口になるリスクがあります。
口呼吸
口呼吸が癖になっていると、舌が低い位置にある場合が多いです。また、常に口が開いている状態になるので口周りの筋肉が弱くなります。
歯並びや噛み合わせは、舌や口周りの筋肉のバランスによって左右されます。通常、舌は上あご側に位置して、舌の力と頬の力が拮抗し合っている状態です。口呼吸の方は、舌と頬の筋肉のバランスが崩れているので、上あごが狭くなりやすいといわれています。そのため、ガタガタの歯並び(叢生)や開咬・出っ歯になるリスクが高いです。
頬杖
頬杖は、あごや一部分の歯に大きな力が加わります。
頭の重さは4〜5キロといわれているのはご存じでしょうか。重みが一点に集中してかかってしまうので、頬杖が癖になっていると歯並びの悪化に繋がります。また、頬杖の時間や回数が多くなると、歯並びだけでなくあごの骨が変形してしまう場合があります。
うつ伏せ寝・横向き寝
就寝中は同じ態勢を取り続けることが珍しくありません。そのため、寝相によっては何時間も同じ部分に力がかかり続けてしまいます。
うつ伏せ寝や横向き寝は、左右どちらかの顔がつねに圧迫されている状態です。毎日、同じ態勢で寝ていると、寝方によっては歯並びや顎の成長に悪影響をおよぼします。また、うつ伏せ寝は鼻呼吸しにくく口呼吸になりやすいので出っ歯の原因になるといわれています。
癖や悪い歯並びをそのままにしておくリスク
癖や悪い歯並びをそのままにしておくと、口のなか以外にもさまざまなリスクが生じます。
悪い癖や歯並びをそのままにしておくリスクは以下の4つです。
・うまく咀嚼できず消化器官に負担がかかる
・虫歯や歯周病・口臭の原因になる
・発音が不明瞭になりやすい
・顎関節に負担がかかる
順に解説していきます。
うまく咀嚼できず消化器官に負担がかかる
歯並び・噛み合わせが悪いと、食べ物をうまく噛み砕くことができません。前歯がうまく噛み合っていないと、食事の際に食べ物を噛み切ることが難しくなります。また、奥歯が噛み合っていない場合は、食べ物をすり潰すことが難しくなるでしょう。
嚥下や消化をサポートする唾液の分泌も少なくなり、食べ物もうまくすり潰されず消化器官に入ってしまいます。食べ物を消化するのに時間がかかるので、消化器官にとって大きな負担になるでしょう。
虫歯や歯周病・口臭の原因になる
歯並びが悪いと、しっかり歯磨きしたつもりでも汚れが残りやすいです。口のなかに長期間汚れが残っていると、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
また、食べカスやプラークは口臭の大きな原因です。大きく乱れた歯並びは自分で清掃することが難しく、清潔な口内を保つことが難しくなります。特に、歯と歯が重なり合って並ぶ「叢生」の方は注意が必要です。
発音が不明瞭になりやすい
開咬やすきっ歯など、歯と歯の間に隙間がある歯並びは、発音が不明瞭になりやすいです。空気が歯と歯の隙間から漏れてしまうので、前歯を擦り合わせて発音する「サ行」が言いにくくなります。
開咬やすきっ歯以外の不正な歯並びでも、舌や口周りの筋肉の動きに支障があると発音に悪影響を与えるリスクがあるでしょう。
顎関節に負担がかかる
歯並びや噛み合わせが悪くなると、顎関節に負担がかかります。顎関節に負担がかかり続けると、あごに痛みが生じたり口が開きにくくなったり生活に支障をきたすリスクが高いです。顎関節に負担がかかると、顎関節周囲の筋肉はもちろん、肩や首周りなど、あご周りの筋肉の緊張にも繋がります。また、肩こりや頭痛・目の疲れなどの原因にもなります。
噛み合わせの悪さは、全身の健康にも大きく関わっているといえるでしょう。
MFT(口腔筋機能療法)のトレーニング方法
MFTをおこなうと、リラックスしたときの舌の正しい位置や正しい飲み込み方を習得することが可能です。MFTは段階に合わせて、さまざまなトレーニング方法があります。
以下に、代表的なトレーニング方法を紹介していきます。
スポット
スポットは、安静時やものを飲み込む際にあるべき正しい舌の位置のことです。
アイスの棒や割り箸などをスポットに5秒当てます。次に、舌の先をスポットに5秒つけます。一連の動作を5〜10回繰り返します。スポットの正しい位置の確認と、舌の先がスポットにつけられることを目的としたトレーニングです。
ティップ
ティップは、舌を尖らせるトレーニングをすることで、舌先の力をつける目的があります。
アイスの棒などのスティックを口の前で垂直に持ちます。舌を出して、舌の先でスティックを押しましょう。舌の先を丸めないでおこなうことがポイントです。その際に、スティックで舌を押して、両者が押し合う状況を作ります。押し合いを3秒間おこなったら、口を閉じて休憩しましょう。一連の動作を5〜10回繰り返します。
ホッピング
ホッピングは、舌を持ち上げる力をつけることが目的です。
舌の先をスポットにつけた状態で、舌全体を使って上の顎を吸い上げます。そのまま口を開けて、上の顎をはじくようにポンっと音が鳴るように離します。一連の動作を10〜15回繰り返しましょう。
サッキング
サッキングは、舌の横の部分の筋肉を強化して、食べ物を正しく飲み込めるようにする目的があります。
舌はスポットにつけた状態で、臼歯を噛み合わせます。舌の横で上のあごの側方をはじくように音をたてます。一連の動作を10回おこないます。
ボタントレーニング
ボタントレーニングは、唇の周囲にある筋肉を強化する目的があります。
紐を通した大きめのボタンを用意しましょう。唇と歯の間にボタンを挟み紐を引っ張ります。唇の力を使って、ボタンが口から出ないようにしましょう。30秒を3セットおこないます。
MFT(口腔筋機能療法)にかかる費用
MFT治療は、保険適応外の自由診療が一般的です。そのため、クリニックによって価格や料金形態が異なります。MFTの費用相場は3,000〜10,000円が相場です。歯科医院によって価格差があるので事前に確認しておくといいでしょう。
また、MFTは一部の症例で保険が適応されます。保険適応される症例は「口腔機能発達不全症」と呼ばれる疾患の場合です。こどもが適応になるか気になる方は、歯科医師に確認してみるといいでしょう。
MFTは、歯科矯正と一緒におこなわれる場合が多く、歯列矯正と並行する場合は無料でおこなう歯科医院もあります。
まとめ
「口をぽかーんと開けている」「飲み込むときに舌を突き出すように飲み込んでいる」など、このようなこどもの癖は、歯並び・噛み合わせに悪影響を与えます。乱れた歯並びや噛み合わせは、虫歯や歯周病・顎関節症など口内の疾患や、発音や頭痛・肩こりなど全身の疾患にも繋がるので、こどもの健康を守るためにも回避すべきでしょう。
MFTは、歯並び・噛み合わせに悪影響を与える習癖を、舌や口周りの筋肉が適切に動かせるようにトレーニングして改善させます。MFTをおこなうと舌や口周りの筋肉のバランスが保たれるので、歯並びの改善や悪化を防ぐことが期待できるでしょう。こどもの癖や歯並びが気になる方は、小児または矯正歯科を受診して、問題ないか確認してもらうことをおすすめします。
当院では、小児の虫歯治療と予防に力を入れております。少しでも気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
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