【症例】右上の上顎洞底挙上術、サイナスリフトにて骨の造成を行った症例
こんにちは南柏・柏の歯医者、ウィズ歯科クリニック歯科医師の佐藤です。
今回はインプラント治療を行うためにサイナスリフトという上顎の骨を造成する処置をおこないましたので紹介させていただきます。
患者様は70代男性です。初診時に噛むときに歯が痛いということで来院しました。パノラマエックス線写真や歯周病検査の結果右上の奥歯が動揺しており、物を噛むと歯が動いて痛みが出ていました。保存不可能と判断し、処置としては抜歯になると説明しました。抜歯後の治療法の選択肢としては入れ歯かインプラントとなることを説明したところ、当時の患者様は入れ歯による治療を選択されました。
抜歯後、入れ歯を作成し数回の調整で痛み等は特に無い状態で経過していましたが、入れ歯を毎食後、取り外し洗わなければならない・食べ物が入れ歯と歯茎の間に挟まるなどの不快感が強く、インプラント治療を行いたいとのことでした。
インプラント治療は外科的な処置となるため、全身疾患等の既往がないか、インプラントを行う上で問題はないことを確認しました。
次にCTによる精密検査の結果、インプラントを埋入するにあたり、上顎洞と呼ばれる副鼻腔までの上顎の骨量が少なく骨を造成する処置が必要でした。
上顎洞における骨造成手術としてはソケットリフトとサイナスリフトという二種類の手術法があります。
ソケットリフトとはインプラント埋入と同時に行う骨の造成処置で骨量が5mm以上残っている場合に行う方法です。術式としてはインプラントを埋入する空洞から上顎洞を覆うシュナイダー膜と呼ばれる粘膜を持ち上げスペースを作り、骨補填材を入れたのちにインプラントを埋入します。メリットとしてはインプラント埋入と同時に行えるので通常のインプラント治療と同じ治療期間であること。歯茎の切開・剥離を行わないフラップレスインプラントが行えることが挙げられます。
サイナスリフトとは上顎洞までの骨量が5mm以下の場合に行う方法です。方法としては歯茎を切開剥離し、露出した骨に窓あけを行い、シュナイダー膜を挙上してスペースを作った後に骨補填材を入れ、吸収性メンブレンという絆創膏のような膜で骨補填材が出てこないように蓋をして歯茎を縫合します。メリットとしては目で見える状態で行うので十分な骨量を造成できることが挙げられます。
骨造成を行った後、6ヶ月の治癒期間を待ったのちにインプラント埋入を行います。
当院では上顎洞側壁の窓開けにはソニックサージオンという超音波切削器具を使用します。この器具は先端が鈍になっていて超音波振動で骨を切って窓開けを行うので、患者様に不快感を与えることなく処置が行えます。従来の骨の窓開けは回転切削器具で行っていたのですが、この術式だとシュナイダー膜を破ってしまうリスクが高くなってしまいます。
今回のケースではCTによる画像診断で5mm以上の骨量が確認出来なかったため、サイナスリフトによる骨造成法を選択しました。また上顎洞の側壁に洞底から8mmのところに末梢血管が走行しているのが確認できたため、血管は避けて治療を行う計画を立てました。
処置後にCTとレントゲン写真にて骨造成の部位と量について確認しました。
術後の消毒にいらした時に腫れと痛みがほとんど出ていませんでした。これから6ヶ月しっかりと経過を観察していきます。
今回紹介した治療法は他院で骨の量が足りないからインプラントは出来ないと断られた方でも鼻疾患がなければ骨造成を行い、インプラント治療が行える様になります。また外科手術は怖いと感じている方には当院ではオプションとなりますが麻酔科医による静脈内鎮静法という眠った様な状態で不安や緊張処置を取り除き処置を行うことが可能です。
これからも知識と技術を研鑽し地域医療に貢献していきたいと思います。