【症例】歯の神経を抜かずに保存した症例
こんにちは!イオンモール柏の国道6号線向かいの歯医者ウィズ歯科クリニックの歯科医師である小川です!
今回は虫歯が神経まで達していたものの、神経を抜かずに保存した症例についてご紹介させていただきます。
患者様は20代男性で、他歯科医院において「虫歯が進行していて神経を抜かざるを得ない。」と診断されたそうです。しかし患者様としてはなんとか神経を抜かないで治療できる方法はないか診てほしいということで当院に来院されました。
一般的に、歯の神経を抜かなければならない状態には、次のようなものがあります。
・頭痛を伴うような耐え難い歯の痛みが続いている場合
この場合、歯の神経に虫歯菌が到達していて、再修復不可能な反応が起きているため神経を抜く必要があると考えます。
・虫歯が神経まで達した結果、神経が壊死して血の巡りがなくなってしまっている場合
この場合、歯の神経が壊死することで感覚がなくなり、一時的に痛みは消えますが、そのまま放置することで、その歯が虫歯菌によってどんどん傷んできてしまうため、壊死してしまった神経を抜く必要があると考えます。
上記のような事柄がない限り、当院では患者様と相談した上で、歯の神経を抜くことはなく保存に努めます。歯の神経は感覚を司る器官として、また細菌に対する防御の面でとても重要です。さらに歯の神経を抜いた後の歯は枯れ木と同じ状態となり、神経がある歯と比べ、割れるリスクが非常に高くなります。もし割れてしまった場合、割れ方にもよりますが、最悪の場合、抜歯となる可能性が出てきます。
このように歯の神経を抜くことにメリットは一つもなく(痛みが取れるというメリットはありますが・・・)、歯の神経を抜くことで、その歯の寿命を大きく削いでしまうことになるため出来る限り歯の神経は残すべきと考えております。1本の歯に治療できる回数はおおよそで3~4回と言われており、歯の神経を抜くことで、それは加速度的に進みます。
では、虫歯が歯の神経まで達していても神経を抜かずに保存できるかもしれない状態とは、どんな状態でしょうか?
答えは歯の神経まで虫歯菌が到達しているか、していないかです。それを判断する方法ですが、虫歯を全て除去したうえで、神経の状態を目視で確認します。その上で次のような状態で神経を保存できるか否かを判断します。
・神経より出血がない⇒✖壊死してしまっているため、神経を抜かねばならない
・神経より出血があるが、止血困難な場合⇒✖虫歯菌が神経まで達していて、再修復不可能な炎症が起こっているため、神経を抜かねばならない
・神経より出血があるが止血可能な場合⇒◎虫歯が神経まで達していたものの、神経自体は虫歯菌に感染していない可能性が高いため、神経を抜かずに保存できる可能性がある
以上のような基準で歯の神経を判断していますが、あくまで可能性であるため、その後強い痛みが出てしまった、また術中の刺激により歯の神経が壊死してしまい、泣く泣く歯の神経を抜く選択をする場合も残念ながらあります。
ですが、歯の神経を保存できる可能性が少しでもあるならば、試してみる価値は大いにあると考えられます。なぜなら、前述したように歯の神経を抜くことにメリットはないからです。
この患者様には、前述した内容に従って、最悪の場合、術中または術直後に神経を抜かねばならないことを了承していただいた上で処置に入りました。術前の診査では虫歯が神経まで達していることが予想されましたが、虫歯を完全に除去してみると、やはり下図のように神経まで虫歯が達していました。
しかし、幸いにも歯の神経に血の巡りが残っていたこと、また出血の程度も止血可能であったことから、歯の神経を残せる可能性があると判断し、歯の神経を保護する材料で蓋をしたうえで、歯科用コンポジットレジンで更に緊密に封鎖しました。患者様曰く、術直後に少ししみる感覚があったものの、その後は少しずつ症状が落ち着いてきているようです。歯の神経の蓋が完全に成熟するまでは3~6か月かかるため今後も継続的な経過観察が必要にはなりますが、歯の神経の保存における第一ステップは成功したと考えられます。
今後も神経まで達している虫歯であっても、歯の神経をできる限り保存することを第一選択に、患者様一人一人の歯の悩みを解消出来るよう、日々の診療に勤しむとともに、技術の研鑽に励みたいと考えております!
※さらに詳しく知りたい方は下記のリンクを参照下さい。
https://www.with-dc.com/treatment/general/