【症例】保存不可能となり抜歯した乳歯の箇所に外科的な侵襲の少ないフラップレスインプラント治療を行い、上部構造の装着まで完了した一例
こんにちは!千葉県柏市イオンモール柏向かいにある、ウィズ歯科クリニックの国際インプラント学会認定医の小川です!
治療前 治療後
今回は保存不可能となり抜歯した乳歯の箇所に外科的な侵襲の少ないフラップレスインプラント治療を行い、上部構造の装着まで完了した一例について紹介させていただきます。
患者様は20歳代女性。「乳歯を抜歯した箇所に対してインプラント治療を検討したい。」とのことで来院されました。患者様に話を伺った所、この患者様は先天的に永久歯の数が少なく、幼少期に萌出した乳歯を使ってきましたが、虫歯となってしまい、何度か虫歯の治療を行った後に他院にて保存不可能と診断され、数カ月前に抜歯を行いました。
それから、ご自身で歯を失った後の治療法について模索した結果、インプラント治療について知り、外科的な侵襲が少ないインプラント治療についてお調べになった結果、当院に来院していただきました。今回の患者様のように、元々永久歯の数が足りず、幼少期に萌出した乳歯が残存している、いわゆる永久歯が先天欠如した症例には日々の臨床の中でしばしば遭遇します。
幼少期の乳歯は口腔内の発育において重要な役割を果たしますが、成長過程の中で12~14歳以降で全ての乳歯が脱落し永久歯に生え変わっていきます。その理由は、成長するにつれて、乳歯が噛む力に耐えられなくなることや、口腔内に存在する細菌の数や種類が変化し、乳歯がその変化に耐えられなくなることなどが挙げられます。一般的に歯を失った後の治療法としては、両隣の歯を削って被せ物を橋渡しのようにして繋げるブリッジ治療や両隣の歯にバネをかけて失った歯の箇所を補う入れ歯治療がありますが、永久歯の先天欠如により残った乳歯が抜歯となるのは年齢的に20~30歳代の方が多いです。
特にお若い方の場合、抜歯となった乳歯の両隣の歯は無傷、もしくは小さい虫歯の治療がされている場合が多く、まだ神経が生きている場合がほとんどです。この場合、大きく歯を削る必要があるブリッジ治療は両隣の歯に大きなダメージを与えることになります。また、入れ歯治療の場合は両隣の歯をほとんど削る必要がないものの、取り外しが必要であったり、歯にかけるバネが目立ってしまったりと日常生活に支障をきたす可能性があります。
一方インプラント治療の場合、保険が使えず、費用が高額になるというデメリットがありますが、両隣の歯を傷つける必要がなく、入れ歯のように取り外しも必要がない、などブリッジや入れ歯にはないメリットがあり、更にお若い方の場合は、インプラント治療のような外科治療を行う際に必ず留意するべき全身的な疾患をお持ちでない方が多く、外科治療を安全に行えることができ、一般的には顎の骨や歯肉の厚みや幅が十分な方がほとんどでインプラント治療を行う際の好条件が揃っているため、一般的に良好な治療の予後を見込むことができます。
これより、乳歯を失った後の治療法として最適なのはインプラント治療だと考えられます。
行ったご提案・治療内容
さて、この患者様の場合、左下5番相当部に欠損を認めました。口腔内診査及びパノラマエックス線写真またCT検査より、歯肉の幅や骨の厚みは十分で、インプラント治療は問題なく安全に行えると診断し、術式については外科的な侵襲が少ない「歯肉を切らない縫わない」フラップレスインプラント治療を行えると説明させていただき、治療を開始しました。
また、右下5番部についても乳歯が残存しており、この箇所については患者様の「使えるまで使いたい」とのご希望から保存することとなりました。この右下5番部については歯周病治療についてなるべく長く残していくと共に、今後もし保存不可能となった場合は、条件次第では抜歯をしてから治癒するまでの期間をスキップすることの出来る、抜歯と共にインプラント体を埋入する抜歯即時インプラント治療について提案させていただきました。
まず、左下5番部についてフラップレスインプラント治療を行うために、CT及び上下の石膏歯型模型より、インプラント体の埋入位置のシミュレーションを行いました。シミュレーションを行う際のポイントはインプラント体を埋入する位置が、下顎の中を走行する血管や神経の集合体である下顎管より十分な距離を確保できることや、骨の厚みや幅に対してバランスのいい位置に配置できること、最終的に装着される上部構造物が理想的な形態となるよう逆算してインプラント体の位置を配置することなどが挙げられます。
当院におけるインプラント治療は、前述したポイントを踏まえて、シミュレーションソフト上にて0.1㎜単位でインプラント体の位置を配置し、サージカルガイドを作製し、術中はサージカルガイドを用いてインプラント体埋入手術を行うため、術前のシミュレーション通りにインプラント体の埋入を正確に行うことができます。
専用ソフトにてシミュレーションを終えた後、サージカルガイドを作製し、手術に臨みました。局所麻酔下にサージカルガイドを装着し、インプラント体の埋入予定部の歯肉を除去した後、埋入窩の形成を行い、インプラント体の埋入を行いました。術時間は15分程度、歯肉に切開を加えていないため、出血もほとんど出ることがなく手術を終えることが出来ました。
その後、2か月の経過期間を設けた後、インプラント体と骨が結合しているかどうかオステルと呼ばれる専用器材にて数値にて評価を行い、インプラント体が十分に安定していると評価できたため、上部構造物の型取りを行い、チタン製の土台にジルコニアクラウンの装着を行いました。
術後の経過・現在の様子
今回は外科的な侵襲の少ないフラップレスインプラント治療を行ったことで、術後腫れや痛み、出血が出ることはほとんどなく、術時間も15分程度でしたので、患者様からは「想像したより全然楽だった!」との言葉をいただけました。また、上部構造物も金属を使わないジルコニアセラミックにて治療を行ったことで、「自分の歯みたいに違和感がない!」と嬉しい言葉をいただけました。
この治療のリスクについて
術後に痛みや出血、歯肉および顔の腫れ、青あざが出る場合があります。出血に関しては術後1~2日で収まり、痛みや腫れ、青あざは術後数日から1週間ほどで収束します。
術直後はそうした症状が出現した際の対処として十分な量の痛み止めを処方します。
治療費用・期間について
治療費用:サージカルガイド 55,000円
フィクスチャー(カムログ社製) 210,000円
チタンアバットメント+ジルコニアクラウン 190,000円
計455,000円
治癒期間:6カ月
治療前
治療後
まとめ
今回はサージカルガイドを用いた低侵襲なインプラント治療である「フラップレスインプラント」を行った症例について紹介させていただきました。インプラント治療は周囲の歯に負担をかけない方法であり、フラップレスインプラントはインプラント治療のデメリットである外科的な侵襲を最小限に抑えることが出来る術式です。術前に埋入する位置を0.1㎜単位で調整できるため、非常に確実で安全性の高い方法と言えます!
当院では国際口腔インプラント学会(ISOI)認定医が三名在籍し、セカンドオピニオン、無料相談も受け付けておりますのでご連絡をお待ちしております。