インプラント治療におけるサージカルガイドの革新性について

こんにちは!イオンモール柏の国道6号線向かいの歯医者ウィズ歯科クリニックの歯科医師の小川です!

今回はWhiteCrossという歯科向け情報サイトのライブセミナーを受講しましたのでご報告させていただきます。

今回のセミナーは「上顎洞挙上術を伴うサージカルガイドを用いたインプラント手術」というテーマで、セミナーの前半は当院でも導入して5年ほどになり、多くの患者様にご好評いただいているインプラント治療におけるサージカルガイドについてでした。講師の新谷先生は2014年に銀座でご開業された先生ですが、それまでの30年近くを大学病院の口腔外科やガンセンターで勤務され、センター長まで勤められた口腔外科のスペシャリストと言えます。

セミナーの冒頭、新谷先生は「現代のインプラント治療においてサージカルガイドは必須です。」と仰っていました。

従来の歯肉の切開剥離を行うインプラント治療では術中にインプラントの位置や方向を決めて行うため、手術時間が長くなり、患者さんの精神的な負担も大きく、またどれだけ精確に埋入しようとしてもズレが生じてしまう可能性があるとも仰っていました。

インプラント治療自体は1960年ごろから行われていた治療法ですが、当時はインプラントを埋入する位置を2次元のパノラマX線写真にてシミュレーションしていました。

その後1992年頃に3次元のCTが歯科でも普及し始め、1998年頃からはCTに加えてインプラントの埋入位置をシミュレーションするソフトも開発されました。そして、2004年頃よりサージカルガイドが誕生しました。サージカルガイドが歯科界に出回って20年近くになりますが、実際にサージカルガイドを用いたインプラント治療を行なっている歯科医院は全国で2割ほどと言われています(新谷先生の歯科医院ではインプラント埋入手術の全例でサージカルガイドを用いているようです)。

サージカルガイドを用いたインプラント治療について新谷先生は術者側と患者様側に次のような利点があると仰っていました。

 

■歯科医師側■

・術前のCT撮影によりインプラント埋入部位の骨の状態を詳細に確認できる

・3次元的にインプラントを埋入する位置や方向をシミュレーションすることが出来る

・手術時間の軽減につながり外科的な侵襲を少なくすることができる

・デジタル化により、院内で患者情報を共有することが出来る

■患者様側■

・術前にインプラントの埋入が終了した状態を確認できるため、手術の工程や内容、リスクなどの理解が得られやすい

・手術時間を短縮できるため、患者様の身体的・心理的な負担を軽減でき、外科的な侵襲を限りなく抑えることができる

・実際の上部構造物の状態も予測できるため予後に期待ができる

 

サージカルガイドの普及

~CTによるインプラント埋入位置のシミュレーション~

~ガイドを用いたドリリング~

このようにサージカルガイドを用いたインプラント治療には多くの利点があると仰っています。

近年はデジタル化が進み、昔は黒電話をつかっていたのが、現代ではスマートフォンに移り変わりました。世間ではスマートフォンに対する議論が行われていたとしても、黒電話の機能について議論する方はいません。これを医科の外科手術で言い換えると、昔は開腹手術のみ行われていたものが、より低侵襲な内視鏡での手術に換わり、近年では低侵襲に加えて、より正確な内視鏡支援ロボットを使用した手術に置き換わりました。新谷先生曰く、内視鏡手術を行っているDrは内視鏡手術中に何らかの問題が起きて、一つ前の開腹手術まで戻ることは出来ましたが、ロボットを使用した手術を行っているDrはそもそもオペ着すら着ていないことが多いため、二つ前の開腹手術まで戻ることは不可能だそうです。そのため、「我々はそうしたデジタルの時代に生きているため、歯科の材料や手術方法に対する議論も進化していかなくてはならない」と仰っていました。

サージカルガイドの精確性については海外論文のエビデンスも紹介していただけました。

Fig.1およびFig.2の論文ではフリーハンドでインプラントの埋入を行った場合とサージカルガイドを用いてインプラントの埋入を行った際の精確性について述べられています。これら論文では、インプラントの深度や埋入位置についてはそれほど差がないようですが、特に角度については大きく差が出ています。そのため両者ともインプラント治療を行う際にはサージカルガイドを用いた方が良いと結論付けています。

Fig. 1 Katsoulis, Konstantinos Katsoulis, S Joannis: Accuracy of free hand vs pilot drill and fully guided oral implant placement: Clinical Oral Implants Research/Volume 28, S14, 04 October 2017

Fig. 2 F Younes, J Cosyn, T De Bruyckere, R Cleymaet, E Bouckaert and A Eghbali: A randomized controlled study on the accuracy of free-handed, pilot-drill guided and fully guided implant surgery in partially edentulous patients: Journal of Clinical Periodontoligy. 2018 Jun; 45(6): p.721-732

では、なぜサージカルガイドが普及しないのか?その理由については以下のように解説していました。

 

・シミュレーションソフトが高額

・サージカルガイドのキットが高額

・サージカルガイドが高額

・クリニックにCTがない

・患者さんは安いインプラント治療を求めており、他院より安くしたい

 

このようにサージカルガイドが普及しない理由は金銭的な面が大きいと仰っていました。

医療行為はあくまで全ての患者様に対して最も良い治療方法が選択されるべきです。ですが、歯科医院が存続するためにはどうしても経営面とのバランスを鑑みながら設備投資をする必要があります。

例えば、規模の大きい歯科医院やより専門的なインプラントセンターであれば、年間で来院される患者様も多く、インプラント治療を受けられる患者様が多いため、更に高度な治療を提供するために設備投資を行うことが出来ます。しかし、規模が小さい歯科医院の場合、一概には言えませんが、年間で来院される患者様の数が少ないため、サージカルガイドが本当はいい物だとわかっていても、このような特殊な設備に対して投資が出来ないという現実があります。

これを踏まえ、新谷先生は「先生方は家族や自分の大切な人にインプラント治療をするときに、金銭面の理由からフリーハンドでインプラント手術をされますか?」と疑問を投げかけられていました。

そんなサージカルガイドも利点だけではなく欠点もあり、例えばお口が大きくあかない患者様に対しては適応できなかったり、サージカルガイドの不適合や破損などの問題点と改善点は多々あるため注意は必要と仰っていました。

 ただ、どんなに数多くの症例をこなしていたとしても、フリーハンドで直線を描いた場合と定規を用いて直線を描いた場合では、定規を用いて直線を描いた場合の方がより正確に直線を描けるため、インプラント治療においてもサージカルガイドは必要であると仰っていました。

当院では年間300本程のインプラント埋入手術を行なっており、そのほとんどがサージカルガイドを用いた処置であり、手術時間もインプラント1本あたり815分程度で行っております。そのため手術が終わった患者様は往々にして「思っていたより全然痛みが出なかった」や「あっという間に終わった」などと嬉しい声をかけていただいております。

歯科業界は今後もデジタル化が進んでいくと予測されます。当院ではこれからも日々最新技術を取り入れて、医院として日々技術と知識の研鑽に励み、ウィズ歯科で治療を受けて良かった!と思っていただけるよう患者様一人一人に対して永続的な口腔内の安定を提供させていただくべく、常にベストな治療を行いと考えております。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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